ご家族が亡くなられると、故人が所有していた衣類や家電などの「遺品」について、どのようなタイミングで整理を始めるとよいでしょうか。形見分けや不要な物の処分は、家族にとって初めての経験となることも多い上、「相続手続き」における注意点もあります。そこで、本記事では遺品整理について、タイミングや注意点をわかりやすく解説します。

遺品整理のベストタイミングはいつ?
ご家族が亡くなられた後は、所有されていた身の回りのものを整理していく作業があります。故人が所有されていたものは「遺品」と呼び、片付ける作業は「遺品整理」と言います。
では、遺品整理はご逝去後どのタイミングで始めるとよいでしょうか。この章で解説します。
葬儀、賃貸物件退去時
遺品整理のタイミングとしては葬儀やご入居されていた賃貸物件を退去される時が考えられます。葬儀は遠方に暮らすご親族も参加していることが多いため、形見分けを行いやすいでしょう。
また、賃貸物件は入居を続けていると家賃を支払い続ける必要があります。清掃作業を早期に行う必要があるケースも多く、オーナー側の求めに応じて清掃と退去を急ぐこともあります。退去時は遺品類を搬出する必要があるため、家具や家電、衣類などを処分することが多く、遺品整理のタイミングとなるでしょう。
遺言書開封後
故人が、封がされた遺言書を残していた場合、遺言書を開封する作業が必要です。家庭裁判所の検認が必要な遺言書の場合、検認期日において開封した上で検認します。
遺言書が開封されれば、遺産を誰が相続するか明らかとなるため、あわせて遺品整理をどのように行うのか、処分するもの・残すものについて話し合いやすいでしょう。
四十九日の法要時
宗派やご親族の考え方にもよりますが、ご逝去後は四十九日のタイミングで法要を行うことが一般的です。
葬儀直後は心の整理がつかず、遺品整理についてご親族間で会話することが難しいケースもあるでしょう。四十九日の法要なら、ご逝去から時間が少し経過しているため、遺品整理について会話を重ね、処分が進めやすくなります。
亡くなられてから3か月以内
故人が死去された後に、相続手続きを進める際には、3か月というタイミングも意識する必要があります。相続放棄、限定承認の期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」と民法で定められているためです。
後述しますが、遺品整理を誤った知識で進めてしまうと、単純承認をしたものとみなされるため相続放棄や限定承認が認められなくなってしまいます。
相続放棄や限定承認をしない場合は、3か月程度を目安に遺品の処分を進めてよいでしょう。
一般社団法人さいたま幸せ相続相談センターでは相続放棄についてのサポートを行っています。詳細はこちらをご覧ください。
遺産分割協議
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。遺産分割協議は相続人間で話し合うため、遺品整理についてもあわせて話し合いやすいでしょう。完了後に処分を進めることで、相続手続き全般が完了できます。
その他
遺品整理には法的な期限は設けられていません。上記1~5以外でも、ご親族間で話し合って遺品整理を行うことが可能です。ただし、進める際には次の注意点があります。
遺品整理時に知っておきたい注意点とは
家具や家電、衣類やアルバムといったものは思い入れがある方にとっては大切な遺品ですが、疎遠だったご親族にとっては早期の処分を検討するケースもあります。どちらの場合でも、遺品整理を行う際には注意点があるため、ご一読の上進めてください。
独断で処分しないこと
故人の遺品を処分する際には、特定の親族が遺品整理を進めないことが大切です。処分に携わることができなかった親族と、処分を実行した親族との間でトラブルが起きる可能性があります。意外な遺品が、ある方にとっては思い入れがある大切なものだった、というケースも多いため、親族間で協議を行った上で遺品整理を進めることが大切です。
相続放棄・限定承認に注意すること
先に触れたように、相続放棄や限定承認には期限があります。故人に生前、消費者金融やローンなどの借入が合った場合、高額の債務となっているおそれがあります。債務を放棄するには相続放棄をします。
一部の財産を守るために、一定額の債務を相続するには限定承認を検討する必要があります。
遺品整理を進めてしまうと、故人の財産を単純承認したとみなされることがあるため、勝手に処分することは控える必要があります。相続放棄や限定承認を検討する場合、遺品整理はもちろん賃貸物件の解約、車両の処分なども行わず、弁護士に相談の上で進めるようにしましょう。
デバイスの処分の前に金融資産等を確認
遺品整理を進める際には、スマホやパソコン、タブレットなどのデバイスを処分する機会が多くなっています。デバイスを処分する際には、アプリなどを確認し、金融資産がないか確認されることがおすすめです。家族が知らない金融資産が眠っており、相続税に大きな影響を与えるおそれもあります。
ネットバンキング、ネット証券などの取引がなかったか、必ず確認しましょう。パスワードにお困りの際には、専門業者に依頼することで解除できる可能性があります。
遺品整理の業者利用も検討しよう
- 故人の遺品が多く、処分に困ってしまった
- 大荷物を急いで賃貸物件から搬出する必要がある
このようなケースでは、ご親族だけで対応することが難しいでしょう。遺品整理には専門業者も多く、搬出や処分をサポートしてくれます。費用はかかりますが、処分まで含めて依頼できることが多いため近年人気が高まっています。こうした業者のサポートを受けることも、遺品整理をスムーズに進めるコツです。
相続手続きに不安を感じたら専門家へ相談を
相続手続きの中でも遺品整理は、ご親族が協力し合えば進めやすいものです。しかし、相続放棄や限定承認であったり、デバイス内の金融資産に不安があるようなケースでは、相続の専門家に相談の上で進めることがおすすめです。では、専門家に相談するメリットとはどのようなものでしょうか。
小さな不安も気軽に相談できる
相続の専門家に相談すると、ご親族間のトラブルを回避しつつ遺品整理などの相続手続きを進めるアドバイスが受けられます。ご家族が亡くなった後は、誰しも不安を感じるものです。また、ネット上の情報が必ずしもご自身の相続手続きに適しているとは限りません。専門家に相談すれば、小さな不安も相談できるため、安全に相続手続きを進められます。
今必要な専門家が誰か教えてもらえる
相続が開始されると、遺品整理だけではなく、以下に挙げるような手続きに直面することがあります。
- 遺言書の開封
- 遺産分割協議
- 相続放棄、限定承認
- 相続税申告
- 相続登記 など
上記以外にも、場合によってはご親族間で遺産分割協議がまとまらず、遺産分割調停や遺留分の請求を受けることも少なくありません。相続の専門家に相談すると、今相談すべき専門家は誰か、アドバイスを受けることができます。相続はトラブルも多いものです。まずは専門家に相談し、必要に応じた対策も進めましょう。
さいたま幸せ相続相談センターの遺品整理サポートの詳細はこちらをご覧ください。
まとめ
本記事では故人の遺品について、遺品整理のタイミングや進める際の注意点を詳しく解説しました。遺品整理は一見簡単に見えますが、ご親族の感情や遺品整理を避けるべきケースも多く、慎重な判断が欠かせません。
さいたま幸せ相続相談センターでは、さまざまな相続手続きにおけるご相談に対応しています。まずはお気軽にご相談ください。
遺品整理に関して詳しく知りたい方はこちらのコラムもご一読ください。
執筆:岩田いく実
監修:おがわ司法書士事務所 小川直孝 司法書士