こんにちは、司法書士の石川です。

 

さて、家族信託という言葉を耳にしたことはありますか?
詳細は割愛しますが、家族信託とは自分の財産を、誰かに、信じて、託す制度です。

 

不動産を信託財産とする信託契約を締結したときは、その不動産に信託の登記を申請することになります。
司法書士は不動産登記申請の代理人となることができますので、信託の登記のご依頼をいただくこともあります。

 

1年前に信託財産を不動産とする家族信託の契約を締結していたけれども、その登記をしていませんでした、今から登記をしたいのですがお願いできますか?と相談を受けた場合を想定してみます。

 

信託契約が1年前であったとしても、その信託契約に関する不動産登記を申請することは可能です。信託契約から信託登記まで、●●日以上空けてはならないという法律が無いためです。

 

しかし、このようなご相談は既に委託者が認知症となっていて、委託者が所有している不動産を売却したいので、その前提として家族信託の登記を入れたいというケースが少なくありません。

 

信託契約の委託者が、信託契約時は意思能力があったけれどもその後認知症となってしまい、認知症となった後に司法書士に登記の依頼をした場合はどうなるでしょうか。

 

司法書士には本人確認義務と意思確認義務がありますので、登記を申請する前に、原則として委託者と面談をして意思確認を行います。

意思確認をした結果、委託者の意思能力が不十分であることが判明した場合は、司法書士はその登記申請の代行をすることができません。

一方で、信託契約の締結後、司法書士に登記申請の代行を委任をした後に認知症となってしまった場合は、司法書士はその登記申請の代行をすることができるとされています。

 

信託財産を不動産とする家族信託の契約を締結したら、すぐに登記申請をしておきましょう。

 

 

法律上、家族信託契約は公正証書で作成することが必須ではありません。
家族信託を利用すれば、認知症である所有者の不動産を売ることができる!という一部誤解を招くホームページのタイトルを見かけることもあります。

 

そのためか、認知症の父の不動産を売りたいが、父が自身で売ることはできないため家族信託契約を締結しておいたことにして、自分が受託者として不動産を売りたいと考えてしまう人も、もしかしたらいるかもしれません。
しかし、それは止めてください。

 

 

ところで、不動産の所有者が認知症となった後に、当該不動産を売却する方法としては「成年後見制度」を利用する方法が挙げられます。

 

相続対策を検討されている方は、お早めに対策されることをお勧めします。