皆さんこんにちは。相続コンサルタントの久保田です。
借地権という不動産の権利をご存知でしょうか?
相続相談をお受けしていると、相続財産に借地権が含まれることがあります。
その中でも、古くからの借地権は、賃貸借契約書が残されておらず、地代を払い続けているだけといった借地権もあり、相続での借地権の位置付けや扱い方をご相談いただくこともありますので、今回は相続の中の借地権についてご説明をしたいと思います。

借地権とは

借地権は、土地を使用する権利を土地の所有者様(地主)から借りていることをいいます。
借地権の中でもいくつか種類がありますが、相続の場で出てくる借地権は、平成4年7月31日以前から賃貸借契約が存続している旧法借地権がほとんどです。
旧法借地権は土地を借りている方(借地人)の権利が強く、半永久的に土地を借り続けられることから、地主様にとっては悩みのタネになることも多く、ときには揉めてしまうこともありますので、取り扱いには注意が必要な権利です。

尚、借地権は売却ができる権利でもあります。
一般的な土地よりは安くなってしまい、売却には手間もかかりますが、借地権が不要になった際は地主様への借地権の返還とともに売却もご検討していただくことをお勧めします。

相続税申告での借地権

相続税申告をするうえで、借地権は相続財産に含まれ、相続税評価を行なう必要があります。
細かい計算は割愛しますが、路線価方式でも倍率方式でも、自用地評価に借地権割合を乗じて相続税評価を計算することができます。
一方で、地主様の相続税申告でも貸している土地(底地)は、詳しいご説明は割愛しますが借地権割合分を自用地評価から差し引いて相続税評価額を算出します。

相続登記での借地権

借地権は登記されることがほとんどありません。これは借地権の登記が義務付けられていないことや、借地権の登記に地主様の承諾が必要なため、借地権の登記をほとんど見ないのですが、そもそも土地賃貸借契約で借地権の登記をしないことが定められているケースもあります。
借地権を登記しなくても問題ありませんが、その分建物の相続登記を行い、借地権を主張できるようにしておくことが重要です。

借地権の相続

借地権を売却する場合、地主様の承諾が必要になりますが、法定相続人が借地権を相続する場合地主様の承諾は不要です。ただ、地主様にご協力いただけるのであれば、遺産分割協議書や遺言書を基に、書面で賃借人変更手続きを行った方が、どなたが借地人なのかが明確になりますので、手続きをして頂いた方が良いかと思います。
尚、上記の通り法定相続人が相続する場合は地主様の承諾は不要ですが、遺言書で相続人以外に遺贈する場合は、売買と同様に地主様の承諾が必要になります。
借地権の売買の場合、一般的に売買価格の10%を承諾料として地主様にお支払いするのですが、遺贈の場合は売買価格がない分、承諾料の算定で揉めてしまうこともありますので、借地権の遺贈をご検討の方は、遺言書を作成するとともに地主様とお話し合いいただくと、相続の際もスムーズに手続きを進められると思います。

土地賃貸借契約書がない場合

頻繁にというほどでもありませんが、お手元に土地賃貸借契約書がない場合もあります。
相続の場では、土地の所有者様が被相続人様と別のご名義になっていたり、地代として定期的に定額をお支払いしていたりといった状況から、借地権として取り扱うことができますが、上記の通り借地権を登記することはほとんどなく、建物登記がある場合でも土地賃貸借契約書を残していただくことをお勧めします。

相続発生後、借地人様のご名義が変わるタイミングが地主様ともお話がしやすいかと思いますが、どのタイミングでも地主様から地代の増額のお話が出る可能性があることにご注意いただきたいと思います。

一般的な土地賃貸借契約は、物価や固定資産税等の税額の変動に合わせて増減させることができることになっており、皆さんご存知の通り現在日本はインフレ傾向にあり、地価公示もコロナ禍以前の水準以上になるエリアが多く、旧法借地権で前回更新時に地代の増額がない場合は次回更新や借地人様のご名義変更による土地賃貸借契約書の作成のタイミングで地代が増額される可能性が高いと思います。

地代増額のリスクはありますが、それでも土地賃貸借契約書がお手元になく、契約内容の詳細がわからない借地権があるよりは、相続のタイミングで土地賃貸借契約の内容を明確にして頂いた方が、次世代の方々に借地権を承継しやすくなると思います。

一般社団法人さいたま幸せ相続相談センターでは、借地人様からも地主様からも借地のご相談をいただくことがあり、借地に関する相続手続きはもちろん、場合によっては底地借地の権利調整が得意な弁護士をご紹介することもあります。
借地権でお悩みの際はお気軽にご相談ください。