みなさん、こんにちは!
不動産鑑定士、相続・不動産コンサルタントの森田努です。
もうすぐゴールデンウィークですね。5月は気候も安定していますし、新緑も鮮やかでお出かけするには最高の時期、皆様はどこかへ遠出される予定はありますか?私は、埼玉県から一歩も出ない予定です 笑。
さて、本日は最近ニュースを賑わせている金融機関の融資トラブルについてのお話。不動産会社スマートデイズが運営するシェアハウスを建築し、同社にサブリースを委託していた多くオーナーに対して、賃料が支払われなくなってしまっていることが明らかになったというものです。
サブリースというのは、サブリース業者がオーナーから割安な賃料で建物全体を借り、その建物を一般のテナントに通常の賃料で貸すことによって、その差額を儲けとして取得するという仕組みのことです。オーナーにとっては賃料は割安だが、空室リスクがないので安心して不動産投資ができるというメリットがあります。そのような仕組みですから、サブリース業者がオーナーから借りる賃料は、サブリース業者がテナントに貸す賃料よりも安くなければなりません。
ところが、本件においては一部で上記の関係が逆転するなど、アンバランスな状態で、そのため、スマートデイズは資金繰りが困窮し、オーナーに賃料を支払うことができなくなってしまっているのです。
それは当たり前の話ですよね。サブリースは、サブリース業者が借りる賃料と貸す賃料の差額が儲けになるので、そこがゼロ、もしくはマイナスなのであれば、事業として成り立たせることはできません。そこをスマートデイズは、入居者の就職あっせんなども行うことで収益を確保していたということですが、結局厳しかったのです。
そして、本件でさらに問題なのが、多くのオーナーがスルガ銀行から融資を受けてシェアハウスを建築しており、その融資にあたって、スルガ銀行が審査を通りやすくするために書類の改ざんなどを行っていたということです。つまり、上記のような無理のあるビジネスモデルで、オーナー様にかなりリスクがある話であるのにも関わらず、建築を思いとどまらせるように説得するどころか、預貯金を水増しする等の不正を行って、積極的に融資を行っていたというのです。
http://biz-journal.jp/2018/04/post_23028.html
現在、スマートデイズは破産手続きに入る見込みで、そうなると、今後オーナーにはスマートデイズから賃料が支払われることはありませんが、借入金の返済義務はなくなりません。そして、直接オーナーがスマートデイズ抜きでシェアハウスを運営したとしても、当初ほどの賃料を得ることは非常に難しく、借入金の返済は非常に難しくなってきます。実際に、賃料収入よりも金融機関への借入金の返済額の方が多いという、逆ザヤが生じているケースが非常に多くあるようです。
オーナーの中には一般のサラリーマンがたくさんいらっしゃるとのことで、彼らはこれから慣れないシェアハウスの運営をしなければならないと同時に、逆ザヤのケースではご自身の給料から借入金の返済をしなければならなくなっています。
かつての金融機関は、事業計画や返済計画をしっかりと精査し、顧客が無理な融資を希望する場合には融資をしない、といった顧客に寄り添う毅然としたものでした。そのため、企業の経営者や地主は色々なことを金融機関に相談することができました。
しかし、近年では低金利の中で金融機関も収益獲得に必死で、多少困難な事業計画であっても融資を実行してしまう傾向があります。今回の融資トラブルの一件はもしかすると氷山の一角にすぎず、これほど極端ではないにしても、金融機関の利益が顧客の利益よりも優先し、顧客が不利益を被むっているという話はもっと多いのかもしれません。
かつて、私は不良債権に係る仕事をしていた関係から、不動産投資をしたもののうまくいかず、結果的に返済が滞ってしまって、自宅まで売却しなければならなくなったような、悲しい事案に多く立ち会いました。今回の件においても、そのような事案が多く発生してしまうのでしょうか。非常に複雑な気持ちです。
もはや相続対策にあたって、金融機関にしっかりとしたアドバイスを期待することは難しいのかもしれません。もし、アドバイスを受けるとしても、「金融機関の言うことだから」、と決して鵜呑みにせず、最後にご自身とご家族を守るのはご自身しかいないということを忘れないでいただきたいと思います。