ご相談いただいた内容

数年入退院を繰り返していた父が亡くなりました。
実の母は30年以上前に亡くなっており、のちに父は再婚をしました。
父と後妻との間には子供はおらず、相続人は後妻と、長男である私、私の妹の3人となります。
父の家系は元々農家で、不動産をいくつか所有しています。

父と私たち兄妹の関係性は良好でしたが、義理の母は私たち兄妹がそれぞれ成人し家庭をもってから父と再婚をしたこともあってか遠慮もあったようで、年に1度会うかどうか程度の関係性でした。

いよいよ父の体調も悪化してきてしまい寝たきりとなってしまった際、今後の相続について話をしてくれました。不動産は先祖から引き継いできた土地なので、長男である私に引き継がせたいと母にも話をして、承知してもらっていると話してくれていました。そのほか預貯金などの財産の管理は義理の母に任せてあり、母の生活に困らないように長男である私に生活のサポートを任せたいと父は私に伝えてくれました。

父を見送ってから、家のことや相続のことについて話し合いをするように母に相談を持ち掛けましたが、義理の母には話をはぐらかされてしまいました。父が亡くなりすぐには相続の話は心情的にしづらいのかと思い、当分そっとしておいたのですが…。
結局、それからも母は話し合いを避け、父の通帳や証券などはすべて母が管理をしていた為、正確な財産の全容も把握できないまま時間が経過していました。

相続税がいくらかかるのかも分からず、かつ相続税の申告の期限も近づいてきており、母にどのように話をすべきか悩みさいたま幸せ相続相談センターに相談してみました。

当センターへご相談いただいた結果

M様と妹様が、当センターにご相談にいらした際には、相続税申告期限の2か月前というタイミングでした。相続税申告は、亡くなられてから10か月以内に申告・納税を行うよう定められており、通常申告手続きは半年程度(場合によってはもっと)時間を要します。
 今回M様の抱える課題は複雑で、相続税の納税・申告手続きの期限が近づいている点。さらに重要なのは、遺産分割においてお母様のご感情面での配慮も課題として抱えておられました。
この時点で財産の全容も把握しておらず、義理のお母様とのお話合いもままならず、遺産の方針も決まっていないという大変困った状況でした。
そこで、当センターの司法書士、税理士も相談に加わり急ピッチで財産の調査等の対応を進め、ある程度の全容が把握するに至りました。
しかしながら、お母様が相続のお話合いになかなか応じてもらえないという点が、大きな課題となっていました。コンサルタントがお話をお聞きしていく中で、M様兄妹としても、亡き父の想いを尊重して、義理のお母様との関係を修復し、老後の面倒も兄妹でみていきたいというお気持ちがあるということをお話し頂きました。

この時点で相続税申告期限まで1か月を切っていました。
お母様とのお話合いの状況を鑑み、相続税の申告については「未分割申告」という方法があることをご提案させて頂きました。M様は、すぐにでも全員での遺産分割協議書を行わないと相続税申告が進まないと思っておられ、無理やりでも母を説得して申告期限に間に合わせないといけないと大変心配しておられました。未分割申告を選択する場合、税務上の特例が使えなくなってしまうといったデメリットもございます。しかし、このまま全員が納得をできないまま遺産分割協議を進めてしまうよりも、お母様のお気持ちに寄り添いながら、丁寧説明をしていくことを重視したいというM様のご意向もあって、状況からやむなしと判断しました。デメリットもご理解を頂いた上で未分割申告での手続きを進めていくこととしました。
幸いなことに、お父様は相続人それぞれを受取人にした生命保険にも加入していた為納税も無事に期限内に終えることができました。

その後、お時間的な余裕もでき、M様は丁寧にお義母様との関係性の構築・お話合いをされました。結果申告期限から約半年ほどかかってしまいましたが、無事に遺産分割協議書もまとまり、税務署への修正申告を行い、全てのお手続きが無事に完了しました。

相続税の支払いや期限ばかりが心配で、当時はお義母様のお気持ちを丁寧に聞く心理的な余裕もなかったとM様は振り返られておられました。「もっと早く相談すればこんなに悩むこともなかった。相談して本当によかった。」と感謝のお言葉も頂くこともできました。
お父様亡き後も、お義母様が安心して老後を迎えられるような老後の生活のご支援のための制度などについても当センターでアドバイスをさせて頂いたりもしました。お話合いを経て、M様の誠実な思いが、お義母様にも伝ったようです。
当事者だけではなかなか根本的な問題解決に至れないことも多く、我々のようなコンサルタントが介在することで、客観的なアドバイスができることが強みでもあります。また、遺産分割を単純に解決するだけではなく、時には「急がば回れ」でその周辺にあるお困りごとの解決、長期的な視点を含めてご家族にとって選択とは何か?を一緒に考えていくことができるのも、相続コンサルタントの役割でもあります。