ご相談いただいた内容
90歳になるお父様がお亡くなりになったことで、相続手続きのご依頼でお問い合わせをいただきました。
お電話でのお問い合わせの際に、都内に不動産を数件保有していることと、ご家族でお話し合いができない状況とのお話があったため、未分割申告が必要になる可能性が高いと考え、初回面談から未分割申告に慣れた税理士とともに詳しいご状況を伺うことになりました。
当センターへご相談いただいた結果
初回面談で、相続財産を整理したところ、やはり相続税申告が必要な状況でしたが、ご家族でお話し合いができないとのことで、相続税申告のご依頼は一旦保留にしつつ、まずはご家族で遺産分割協議に向けたご意向の確認を進めることになりました。
ご相談者様がご家族と疎遠だったため、ご家族皆様の明確なご意向はわからないものの、ご相談者様の中で「おそらくそれぞれがこの様に考えている」とのお考えをヒントに、ご家族皆様へのご確認いただく内容を整理することがスタートラインでした。
また、将来お母様に相続が発生した際にも同様に遺産分割協議を行う必要があることをご説明して、お母様に遺言書を作成いただくこともご提案しましたが、お母様は遺言書を作成する性格ではないとのことから、お母様の遺言書を作成できない前提でお父様の相続税申告や相続手続きを進めることになりました。
状況によっては弁護士へのご依頼も視野に入れていただきながら、まずはご自身でご家族とお話し合いをしていただけることになりましたので、ご家族からのご連絡をお待ちすることになりました。
ご家族でのお話し合いが進まないまま初回面談から数ヶ月が経ち、相続税申告期限が近づいてしまったため、ご相談者様お一人で相続税申告をご依頼いただくことになりました。
税理士による相続財産の相続税評価と並行してご家族でのお話し合いを続けていただき、結果としてお母様に間に入っていただいたことで、遺産分割協議が成立し、相続税申告も相続人様全員で一括してご依頼いただけることになりました。
残念ながら1ヶ月ほど相続税申告期限には間に合わなかったものの、相続税申告期限の直前には遺産分割協議の方針が固まっていたため、期限後申告のペナルティをご説明してご理解いただいたうえで未分割申告にはせず、期限後申告を行うことになりました。
未分割申告の場合、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が適用できないデメリットがあり、これらの特例を適用するためには修正申告を行う必要があるので、同様のケースでも、未分割申告後に修正申告を行う方法とペナルティを支払って期限後申告を行う方法とを比較して、メリットの大きい方を選ぶ必要があります。
その後、お父様のお手続き完了から1年ほど経過したタイミングで、お母様がお亡くなりになったとご連絡をいただきました。
上記の通り、お父様の相続手続きではお母様がお子様方のクッションになっていただけたことで、遺産分割協議が成立しましたが、お母様の相続手続きでは相続人がお子様方だけになるため、クッション役として間に入っていただける方がいらっしゃらず、二次相続時点で遺産分割協議が成立しない可能性が高いと考えていました。
そのため、お父様の遺産分割協議時点で、将来お子様方が相続する不動産の共有持分を一部相続していただく、お母様の遺産分割協議の指標となるような遺産分割協議をご提案して、ご家族皆様にご納得いただいておりました。
お母様の相続財産は、お父様から相続したものも多かったので、お父様の相続税申告を担当した税理士が担当することになり、相続税申告期限までに余裕を持って相続財産評価を進めることができました。
一方で、お母様の遺産分割協議では、お父様の遺産分割協議書を指標としたものの、お子様方それぞれのご意向もありましたので、代償金で調整をして無事期限内に相続税申告が完了しました。
ご相談者様とは長期的なお付き合いとなりましたが、一次相続からサポートをさせていただいたことで、より遺産分割協議が成立しにくいと思われた二次相続まで見据えたサポートができました。
もし一次相続のタイミングで、相続税だけに注目していた場合、二次相続ではここまでスムーズに遺産分割協議が成立しなかったかもしれません。
今回のケースでは、初回のご相談時点からご家族でお話し合いがしにくいことを伺っていましたので、お父様の遺産分割協議で将来を見据えた分割内容を検討することで、二次相続の遺産分割協議を比較的スムーズに進めることができました。
相続税申告では、相続税額や期限が注目されやすいのですが、一次相続の際は将来の二次相続を見据えた遺産分割協議を検討することも重要なポイントになります。
通常、親子といえども不動産の共有はお勧めしないのですが、今回のように一次相続で残された配偶者様がクッションとなり遺産分割協議が成立するご家族の場合は、一次相続の遺産分割協議時点で二次相続の遺産分割協議の指標となるよう、不動産を共有にしておくことも有効な手段になります。
遺産分割協議が成立しないと、相続税申告やその他の相続手続きが遅れてしまうことになりますので、ご自身のご家族が遺産分割協議で揉めてしまう可能性がある方は、遺言書の作成をご検討いただきたいと考えています。
ご両親のご意向以外でも遺言書を作成できないケースは多々あると思います。
今回のご相談も、遺言書が作成できればよりスムーズに遺産分割協議を進めることができたと思いますが、遺言書を作成できない場合でも時間をかけてしっかりと他の相続人様にもご納得いただけるご提案ができると、確認したご相談でした。