ご相談いただいた内容
お母様がお亡くなりになったため、ご兄弟が相続税申告手続きを進めているはずでしたが、相続から半年以上経過してもご兄弟や税理士からの連絡がないことでご不安になり今後どのように進めていけばいいのか相談したいとお問い合わせをいただきました。
ご自宅不動産の他に預貯金や有価証券があり、相続税申告が必要とご兄弟から聞いていたものの、通帳等の金融資産に関わる資料がお手元になくお母様の相続財産の全容がわからない状態でしたが、税理士とともに詳しいご状況を伺うことになりました。
当センターへご相談いただいた結果
初回面談で不動産の立地を伺うと、土地だけでも相続税の基礎控除を超えることがわかりました。
そのため、早急にご兄弟へ相続税申告の進捗状況をご確認いただくとともに、相続税申告の必要書類をご説明して、状況によってはご兄弟から必要書類をお預かりしてI様が主導して相続税申告手続きを進めていただくことを提案しました。
またご面談の中でご兄弟仲が良くないことや、お母様とご兄弟が同居していたことで、ご兄弟はI様には相続させたくない意向があると伺いました。
そのため、相続税申告手続きと並行して、ご兄弟のご意向によっては今後兄弟間のやり取りを弁護士に対応していただく可能性もある旨をお伝え、弁護士へのご依頼を提案しました。
初回面談から数日後にI様から改めてご連絡をいただき状況をお伺いしたところ、ご兄弟は税理士にも依頼しておらず相続税申告手続きを全く進めていなかったことや、相続税納税のためにI様が税理士に依頼して相続税申告手続きを行うと申出ても聞く耳を持たず、I様には相続をさせないとの意向とのことでした。
弁護士との面談では、ご家族関係をより詳しく伺い、I様の代理人としてご兄弟とのやり取りの窓口として、ご兄弟の手元にある相続税申告資料の請求や遺産分割協議の交渉をご依頼いただくことになりました。
弁護士から受任通知と合わせて、相続税申告の重要性をご兄弟に説明したところ、この点はご兄弟からすぐに資料を送付していただけたため、I様に確認の上初回面談を対応した税理士で相続税申告を進めることになりました。
遺産分割協議の交渉では、弁護士が度々ご兄弟とお話をしたものの、ご兄弟の意思が固く平行線の状況が続きました。
交渉を続ける中で単独で相続したい理由として、お母様と同居しているという点に加え、現在定職に就いておらず金銭的な余裕がなく、お母様の年金を頼りに生活していて今後の生活資金に不安を抱いていること、そのためI様に代償金等を支払えないなどの経済状況であることが分かりました。
そのため、弁護士からお母様名義のご自宅不動産を売却して売却益を分ける「換価分割」を提案したところ、ご兄弟から細かいご要望は出てきましたが概ね了承を得られることになり、相続税申告期限までに遺産分割協議が成立して無事期限内に相続税申告が完了しました。
その後、不動産売却をはじめとして各種経費の清算や不動産売却に伴う譲渡所得税の申告を税理士・弁護士と協力してサポートをさせていただき、すべての業務が完了しました。
I様のご相談では、弁護士・税理士間で交渉状況を随時共有していたため、常にどのような状況になっても期限内に相続税申告を完了できるよう準備を進められたことが成功のポイントの一つになったと思います。
I様のご兄弟は、弁護士からの連絡に対しては誠実にご対応いただけたことで、スムーズに遺産分割協議が成立しましたが、中には弁護士からの連絡も取り合わない方もいらっしゃいます。
遺産分割協議は相続人様全員が同意する必要があるので、I様のように相続税申告が必要な状況で相続人様同士でお話し合いができない場合は、お早めに弁護士へ依頼していただき、弁護士と税理士で連携しながら遺産分割協議と相続税申告を進めることで、相続税申告期限までに遺産分割協議が成立しない場合でも、ペナルティを最低限に抑えて相続税申告ができると思います。