
ご相談いただいた内容
埼玉県西部にお住まいだった叔母様がお亡くなりになったため、相続手続きを依頼したいとのお問い合わせをいただきました。
叔母様は独り身でしたが、R様のお母様にすべての財産を相続させる旨の公正証書遺言書を作成していたので、遺言書に基づいた不動産の相続登記と預貯金の解約手続きが中心になるとのことでした。
当センターへご相談いただいた結果
R様やお母様は叔母様がご健在なうちから頻繁に叔母様のご自宅を訪れ、生活のサポートをしていたことから、叔母様から重要書類の保管場所や遺言書の存在を聞いていたため、お問い合わせをいただいたタイミングではすでに相続財産の概要がわかる書類がお手元にある状態でした。
そのため初回面談から、叔母様の遺言書や不動産の課税明細書をご用意いただき、早期に相続財産の全体像を把握することができました。
叔母様の預貯金は不動産(叔母様のご自宅、ご自宅の近くにある雑種地、農地)と預貯金(数百万円ほど)といった構成で、叔母様のご自宅周辺は空き家も目立つエリアだったため、R様は不動産もそこまで高額な評価にならないとお考えでした。
課税明細書を確認したところ、ご自宅は土地建物で1,000万円前後の評価額でしたが、雑種地は3,000万円ほどの評価額となっており、地図でお示しいただいた周辺環境と照らし合わせても評価が高すぎる印象を持ちました。
路線価図では雑種地の前面道路にもしっかりと路線価が設定されており、単純に地積×相続税路線価で算出した概算相続税評価額は4,000万円を超える評価となり、加えて農地も倍率が高く、概算相続税は叔母様の預貯金以上の金額となり、お母様の預貯金から相続税納税資金を充当する可能性が出てきました。
対応した税理士も土地の減額要素を洗い出したところ、約2,000万円ほどまで減額ができましたが、雑種地を売却する場合は1,000万円前後になる周辺相場だったため、より詳しく雑種地の状況を確認することになりました。
現地調査や役所調査を行ったところ、以下のような状況が確認できました。
- 前面道路が市街化区域と市街化調整区域の境となっており、雑種地が市街化区域内のため評価が高額になっている
- 前面道路には上水管・下水管が敷設されていない
- 前面道路に側溝がなく、浄化槽を設置しても排水先を確保するためには第三者所有地を経由する必要がある
- 地積が大きく開発許可が必要になる規模だが、前面道路幅員が狭く開発許可を得られない
以上をまとめると、基本的には建物の建築が難しく、建築できたとしてもライフライン確保のため高額な費用がかかる土地と判断できました。
そこで、R様にご了承をいただき、不動産鑑定士にも上記の概要を伝えたところ、大幅に減額できる可能性があるとの回答を得られたため、相続税申告書に添付する不動産鑑定評価書を作成することになりました。
結果として不動産鑑定評価書では、雑種地の評価を約800万円ほどまで減額することができ、相続税も当初の試算から大幅に減額することができました。
雑種地については、R様やお母様も持っていても固定資産税が負担になるだけとのご意向が強かったため、ご売却までお手伝いをさせていただき、相続税申告完了直後に雑種地のご売却も完了させることができました。
一般的に路線価は公示価格よりも低く設定されているため、このような土地は稀なケースかと思いますが、今回の雑種地以外でも「時価<路線価による評価」となっている土地は、相続税のルールでの減額を行いながら、相続税のルールでの減額ではカバーしきれない場合に不動産鑑定評価を行うこともご検討いただくことをお勧めします。
不動産鑑定評価も数十万円から土地によっては100万円を超える費用がかかりますので、不動産鑑定評価を行うことで削減できる相続税額と比較して費用対効果があるかでご判断いただくと良いと思います。


