ご相談を頂いた内容

都内で賃貸マンションを経営している父の相続が発生して相続の手続きをしなければならなくなりました。

賃貸マンションのローンも残債もあり、金融機関からも急いで相続手続きをするように連絡がきていましたが、何から手を付けていいものか途方に暮れていました。不動産にも詳しい専門家や士業がいるという評判をみて、さいたま幸せ相続相談センターへ相談をしてみました。

当センターへご相談いただいた結果

初回面談でご状況をお聞きしたところ、賃貸経営をしている銀行口座が凍結されてしまうため急いで遺産分割協議をするように金融機関に言われていたようです。

毎月の家賃の入金もできず、かつローン返済もできないような状況となってしまうとのことで大変焦っておられました。

まずは、詳しく状況整理のためヒアリングを行いました。

お母さまを早くに亡くされ、お父様はお一人暮らしだったそうです。お子様は、Y・U様は妹様との2人兄妹というご家族構成でした。遺言書はなかった為、ご長男であるY・U様と妹様の二人で遺産分割協議を行う必要がございました。

ご家族の関係性は良好でしたが、ハツラツとした元気なお父様だった為、まさか突然体調が悪くなるとも思わず、マンションの経営のことや相続のことなどほとんど話をしてこなかったそうです。

相続財産を整理したところ、都内のマンションの評価額が高額であった為、負債を考慮しても相続税申告が必要な状況であることが分かりました。相続税は相続財産の内の現金で支払いができることが分かりましたが、相続した賃貸マンションを今後どうするのかが大きな課題でありました。

しかし、マンションの経営状態もほとんど把握しておらず、どのようにご相続することが適切なのかを短期間で判断することは至難の業です。そこで、しっかりと不動産の本質的な価値を理解した上で判断するべきであるとご相談者様へアドバイスをさせて頂きました。

しかしながら、現実的に賃貸しているマンションで返済もある場合、相手方は待ってはくれません。

口座が凍結されてしまうと、毎月の家賃の入金ができなくなり、そしてローンの返済が滞ってしまうため急ぎ遺産分割協議をまとめる必要がありました。

そこで、司法書士と相談し「遺産の一部分割」という方法を提案させて頂きました。

相続財産を一度に分割協議するのではなく、特定の財産(今回のケースは賃貸経営用の口座)だけを対象として、先に遺産分割協議を行う方法です。

今回のように、賃料の受け取りや経費の支払いなど、早急な対応が必要な財産がある場合には有効な方法と言えます。

まずはこの方法で急務な手続きを進めることで、その後の不動産をどのように相続するのがいいのかをじっくりと検討するための時間的な余裕ができ、大変安堵されておられました。

相続手続きにおいては、定められたいくつかの期限がありますが、時間に追われご家族同士でのお話合いを十分に行わずに決定してしまうと後々のトラブルの元となります。

その点のリスクをしっかりご理解頂き、一部分割という方法をご選択されました。また今回の場合、不動産の経営状況を把握するための時間的な余裕を作ることができた点においても、メリットのある方法となったかと思います。

ここからは、相続税申告の手続きを担当する税理士も含めて、ご相続財産の全体像の調査と精査を行いました。

時間的なゆとりができましたので、そこからご兄妹それぞれのご要望をお聞きいたしました。

ご兄弟は仲もよく、お互いにできるだけ平等になるような分け方をご希望でした。

妹様は不動産に関しては素人であることやローンが残っていることも考えると相続しても管理することが難しいので、すぐに売却して分けたい意向があるようでした。

一方でY・U様としては、先祖代々継いできた土地であることを考えるとできれば残していくべきであると考えておられました。またお父様のお姉様(叔母様)からは、もともと実家があった場所なので簡単に売却しないようにと釘をさされていたようです。

ご相続で一番頭を悩ますのが、不動産をどのように分けるかです。

不動産を単独で保有するのか、共有で保有するのか、売却するのかといったいくつかの選択肢があるものの、いずれもメリットデメリットがありなかなか結論を出すことは簡単ではありません。一概にこの選択肢がいいとは言えず、不動産の状況や当事者の価値観によってどの選択がよいのかは変わってくるような大変奥深いものです。

今回の場合、都内のマンションで評価額も高くマンション以外に同等の財産がないためご兄妹とのバランスを考慮するとなかなか難しい判断が迫られておりました。

売却の方針も検討しましたが、Y・U様としては親族のことも考え単独で保有し、妹様へしっかりと代償金をお支払いすることができないかとお考えでした。その場合、代償金の額をいくらとするのか、そして代償金の支払いするための費用の捻出をどのようにするか、が課題でした。

相続コンサルタントと税理士も含めて、ご兄妹に不動産の評価について丁寧にご説明を行いました。

賃貸マンションは、相続した時点での評価額だけではなく、相続したあとにどのような収益を生み出すのかといった長期的かつ複合的な価値とリスクを把握することが必要です。不動産の本質的な価値を、相続人であるご兄妹様で共通認識をもつことが、円満な相続の秘訣と考えています。

結果的にはY・U様が不動産を単独で所有し、代償金を妹様へ支払う方針とすることが決まりました。

そして、代償金の額をいくらとするのか、そして代償金の支払いをするための費用の捻出をどのようにするかが課題ではありましたが、妹様にもしっかりと不動産の本質的な価値をご理解頂き両者が納得できる代償金の額をお話合いで決めることができ無事に遺産分割協議がまとまりました。

ご相続人様間でのご関係性や価値観によって、このようなお話合いをどのように進めていくかは、私どももケースバイケースです。ご相談者様と相談しながらお手続きを進めております。

今回のケースは、ご兄妹の仲も良く、お話合いもスムーズにできる関係性であったため、分割協議書の作成・申告手続きのお話合いもすべてお二人でご同席を頂き、情報共有をしながら進めていくことができました。

ご兄妹で、ご相続に関しての共通の課題を共有し、ご資産の状況や不動産の価値についても共通認識を持ちながらお話合いをすることができました。その為、代償金の額についても双方が無理のない納得感のある金額・支払方法で同意することができました。